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幕の内弁当の美学 [旅のグルメ]

20年以上の昔の話ですが、
東海道沿線において駅弁の花形といえば、「幕の内弁当」という時代がありました。
「幕の内弁当」自体は歌舞伎を観劇しながら劇場内で食べるお弁当がその源流ですが、
駅弁における「幕の内弁当」は、日の丸ご飯に卵焼き、エビフライ、かまぼこ、焼き魚など数々のおかずが盛られ、バランスの良い食事が出来るような内容が定番でした。

国鉄の分割民営化以降、地域色の豊かな駅弁がもてはやされるようになり、また東京圏では特に東日本が営業的に東北の駅弁の拡販に力を入れるようになった背景もあり、幕の内弁当、はだんだん下火に。
デパ地下弁当のブームもあって、ご当地の一点ものか、デパ地下的な「何十品目」弁当や「なだ万」もどきな豪華弁当に取って代わられるようになり、最近では東京山手線内の駅構内で「幕の内弁当」的なお弁当を探すのは非常に困難になりました・・・。

以前、出張のため東京駅で駅弁を買う際に。仕事で多忙で非常に偏った食生活を送っていたので、「幕の内」的なお弁当が恋しくなったのですが、少なくとも東日本の構内には置いていない・・・。

昔からの東京駅名物の数種類と高級な懐石弁当を除くと、残るは東北の名産を前面に出したお弁当ばかりで・・・。「牛肉ど真ん中」も「牛タン弁当」も「かきめし」も「知床寿司」も、「チキン弁当」も「深川めし」も良いのですが、「一点もの」の弁当が食べたくない時も確かにあるな、と。

かといって、駅弁に「なだ万」や「菊の井」の値段を掛けるのも悔しい。
そんな時に東海道沿線の、幕の内が懐かしく感じました。
東から崎陽軒、東華軒、桃中軒、富陽軒、東海軒・・・。
原型の「幕の内」は静岡県内によく残り、中でも富陽軒の幕の内は原型に近い姿で価格もリーズナブル。
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この日のおかずは、煮物(がんも、人参、蓮根など)、揚げ物(海老フライ、豚のフライ)、卵焼き、焼き魚、シウマイ、そぼろ、そして静岡の幕の内には欠かせない「わさび漬け」(笑)。

ほかに幕の内的な内容の名物駅弁として、シウマイ弁当やこゆるぎ弁当、静岡駅の茶飯弁当など。
どれも地域の名産と色々なおかずが見事に一体化していて、ほっとする味。

思えば急行電車全盛期がこれらのお弁当の時代でしょうが、
旅をする人の健康を考えて作った当時の人々の愛情を感じます。

駅弁大会などではインパクトの強い「地域の名物」一点もののお弁当の陰に隠れてしまいますが・・・。おかずの多い「美味しい幕の内弁当」というのは、食の豊かな地域でないと作れないお弁当。
これからもずっと、続いて欲しいと思います。
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